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人の命をあずかる医療現場においても、LGBTをはじめとする性的マイノリティ(以下LGBTs)の人たちは多くの困難に直面します。性別違和を持つために受診を拒まれてしまうケースや、同性パートナーの面会を認められない、家族として扱われない…など様々な事例が報告されており、時に生命の危機に直結する事例や同性パートナーを分断するような差別的な対応事例も報告されています。平成 28 年度の医学教育モデル・コア・カリキュラムでは「ジェンダーの形成並びに性的指向及び性自認への配慮方法を説明できる」という項目が加わり、医療従事者がLGBTsについて学ぶ必要性が明示されました。
本シリーズは医療の現場に焦点を当て、LGBTsの人々が直面する様々な課題について取り上げます。そこに関わる医療従事者をはじめとする周囲の人々が何を考え、どう行動するか具体的なケーススタディを通して学ぶことが出来る構成になっています。医療や対人援助の道を志す人たちが、性的指向や性自認といった性の多様性への深い認識や人権感覚を養うことを狙いとしたドラマ教材です。
第1巻 患者とのコミュニケーション
医療や看護に携わる専門家にも性の多様性への理解が求められますが、LGBTsのいずれかであると明確にわかったうえでの診療経験はない、という医療従事者も多くおられるでしょう。本来、性的指向や性自認をカミングアウトするかしないかを決めるのはご本人の意思によるものですが、医療現場ではそういったプライベートな情報に接することも少なからずあり、医療従事者ひとりひとりが性の多様性について正しい知識と認識を持った上で、専門職として患者と接することが求められます。
この巻では同性愛者や性別違和を持つ患者とのコミュニケーションにおける注意点をドラマで描きます。先輩看護師とのOJT(On the Job Training)のドラマを通して、無自覚に発せられた言葉が相手を傷つけていないかを考えます。
第2巻 誰もが安心して通える病院づくり
誰もが安心して受診できる医療機関であること、そのための環境づくりが求められますが、LGBTsの人々にとっては、気軽に受診・通院できないような様々な障壁が存在します。とりわけ、身体の性と性自認が異なり、性自認に基づいて生活したいと思うトランスジェンダーにとっては、男女の区別が前提になっていることが多い医療機関へ行くことをためらってしまい、容体を悪化させてしまう場合もあります。
この巻では、LGBTs当事者やその家族が通いやすい病院や診療環境づくりをドラマ仕立てで考えます。待合室の呼び方から病衣などの問題をはじめ、医療現場で起こりがちな様々な課題を扱い、実践的な取り組みや診療コミュニケーションの在り方に、具体的なヒントを示すとともに、医療従事者が性の多様性を学ぶ必要性を喚起します。